2009年5月5日火曜日

ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎さんの作品を読んでいつも上手いなと思わされるのが、現実的にはちょっとあり得ない設定の世界に、現代社会の問題を投影させること。
そのせいか荒唐無稽な粗筋でも、とても面白く読ませながらも、社会を変えたいなと読者に思わせてくれる。その力が凄いなと思う。
彼の自分の作品の中で「小説は身体に染みこむんだ」とは言っていたけど、やはりパンクロックに近い作品が多いなと感じる。
そんなこんなで伊坂作品が大好きなんです。

前置きが長くなったが、「ゴールデンスランバー」を読んだ。
「3回読んでほしい」というインタビュー記事を読んだので、1年越しに3回読んだ。
昨年の直木賞へのノミネートは辞退はしたが、たくさんの文学賞を受賞しただけあって、面白い作品。

物語は、仙台で首相暗殺事件が起こり、国家のような大きな仕組みによって犯人役に仕立てられた青柳雅春が頑張って逃げるというお話。
ハリウッド映画よくありそうな内容。それでも、ハリウッド映画では味わえない小説の上手さを感じる。

逃げるという粗筋の中に、学生時代の閑話を挟むことで、各キャラクターを際立たせるとともに、1つの大きなうねりに集約させる構成はさすが。
思わず涙しそうになる優しさが感じさせる甲乙つけがたい結末も好きだな。

小説って文学でもあるし、文化でもあるし、娯楽でもあって、色々な要素があると思うけど、この作品は1つの小説の型としての完成形なのかなと思う。

0 件のコメント: