2009年5月30日土曜日

「原因」と「結果」の法則

自己啓発本の原点といえる本。
かなり前に薦められていたのですが、やっと読むことができました。

本書は、日々の「思い」の結果が人格や環境、健康を形成する。
そして、利己的な欲望を捨て、穏やかな心でい続けることが大きな成功となる。
という考えを説いた内容となっています。

本書を斜め視線で読んでしまうと、あまり意味がありません。
人生はそれほど単純ではないだろうし、社会システムは不公平なものですし、正しく清らかな心という意味もよく分かりませんし。

でも、「何を学ぶことができるのか」と建設的な考えのもと読み進めると、とても良い本に思えます。

以下、本書より。
「私たちは、自分の心を高めることによってのみ上昇し、克服し、達成します。
そして、その努力を怠ることによってのみ、弱さ、絶望、苦悩の中に留まりつづけるのです。」

当たり前のことですが、真理だと思います。
卑屈な思いに蝕まれ、原因を社会や自らの境遇のせいにしがちな時に、本質的なことを思い起こしてくれる本です。
時々、読み返したいな思えました。

2009年5月24日日曜日

ダ・ヴィンチ・コード[映画]

ダ・ヴィンチ・コードの小説の後は映画を観ました。
正直、期待外れな結果でした。

やはり、上・中・下巻と3冊もある小説を2時間強の映像に収めるという試みは無茶があると思います。
視聴者を置き去りに、ただハイテンポで物語が進んでいきます。
この映画を原作を読まずに理解できた方は、果たしてどれ程いるんでしょう・・・。
時間の関係上、暗号もあまりに呆気なく解読してしまいます。
結局、必死に原作をなぞるだけになっていて拍子抜けです。

あとは、CGを駆使しすぎです。
舞台がパリとロンドンとバチカンなので、重厚さと美しさを兼ねそろえた壮麗な映像を期待していたのですが、観るからにCGばかりで残念です。
何かピクサー社の映画の中で、トムハンクスが必死に演技しているように観えてしまい、全く集中できませんでした。



原作が面白かっただけに、個人的には残念でした。
「天使と悪魔」は面白ければいいのですが。

ダ・ヴィンチ・コード[小説]

ダ・ヴィンチ・コード読みました。
先週の火曜にブックオフで3冊300円で買って、頑張って週末に読破しました。
実は3年前ぐらいに少し読んで途中で放棄したのですが、今回は最後まで面白く読めました。

世界的ベストセラー作品なので、内容は説明する必要ないかもしれませんが、キリスト教の根幹を揺らがす「聖杯」を探求する物語です。
レオナルド・ダ・ヴィンチやキリスト教についてのエピソードを織り交ぜながら、程よいテンポで物語が進んでいきます。
キリスト教や西洋史の知識も少し必要ですが、Wikipedia等で調べながら何とかついていきました。

ミステリー小説としては暗号の解読も興味深かったですが、僕はキャラクターの使い分けにやられたという感じです。
思わず感心してしまいます。
本作はイエス・キリストを巡る物語としても、ミステリーとしても面白く読める小説だと思いました。



あと、個人的にはパリ旅行でルーヴル美術館に2日も行ったので、情景をリアルに想像できたのが楽しかったです。
ロンドンにも行ったことがある方はもっと楽しく読めるんでしょうけど、僕はGoogleストリートビューを活用しながら読ませてもらいました。

パリのルーヴル美術館のストリートビュー。

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ロンドンのウェストミンスター寺院のストリートビュー。

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ヴィデオを待ちながら

東京国立近代美術館工芸館と東京国立近代美術館のセットのチケットが800円ぐらいだったので、東京国立近代美術館の「ヴィデオを待ちながら」という展示会も行ってきました。
ビデオアートって、昔当時付き合っていた彼女と六本木の森美術館で見て以来だな思いつつ、あれは刺激的で楽かったなと思いつつ。
(当時の彼女は今の妻ですが。)

今回の展示会は、ブラウン管テレビやプロジェクターを使って50点ほどのビデオが流れているという非常にヘビーな展示会でした。


印象的だった作品を幾つか紹介します。

・拡張された表情(エリックと)
父親が色々と表情を変化させ、息子がビデオを通して変化する表情を察知し、それを模する作品です。
伝えたいことは分からないですが、表情を模するまでのタイムラグが少し滑稽です。
そして何より、色々と変化させる親子の表情が可愛いらしい。

・向き合った鏡と時差を持つヴィデオ・モニター
向き合った鏡が2つあり、それぞれの鏡に5秒前の映像を流すヴィデオ・モニターを設置した部屋です。
鏡の中が幾重もの世界になっており、5秒前の自分の行動や、5秒前まで存在していた人間が映し出されて面白かったです。
ちょっと不思議で、不気味な空間でした。

・事の次第
ピタゴラス装置(ビー玉等を転がして、次々と物を倒したり滑らしていく装置)の応用版。
これは凄かったです。
本来は物を倒したエネルギーとかで連動的に他の物を動かす仕組みなんでしょうけど、火を灯した蝋燭の中に大量の蝋を流し込んだり、液体窒素を空気中に分散させる勢いで他の物を動かしたり、床にばら撒かれたオイルの上に蝋燭を落としたり、そのオイルの先端に導火線が置かれていたり・・・、危なすぎて、驚きの連続でした。
そして、均衡を破るエネルギーがどれも絶妙です。

大半は僕の理解を超えた不気味な作品でしたが、ユーモラスでシュールな作品や、ひたすら感心してしまう驚きの作品や、何となく見入ってしまう作品など色々なタイプの作品があり楽しかったです。
アートの幅の広さに感心させられてしまいました。

これも時間と興味がある方はどうぞ。

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東京国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/

ヨーロッパの工芸とデザイン

「ヨーロッパの工芸とデザイン ―アール・ヌーヴォーから現代まで」という展示会を観に東京国立近代美術館工芸館に行ってきました。
と言うより、如何にも明治建築という感じの工芸館に入るために、展示会を観て行きました。

先日友人と銀座のライオンという75年ぐらい前から続いているビアホールに入ってから、少し昔の和洋折衷の建物が無性に観たくなったのです。
赤レンガといい、やっぱり格好いいですね。



正面玄関のあたりです。
ここが東京の中心だとは思えません。



肝心の展示会の方もなかなか面白かったです。

イギリスで19世紀後半に活躍したドレッサー・クリストファーというデザイナーの作品が特に良かったです。初めて工業デザインを手掛けた人だそうです。

下記の写真は蜀台です。
装飾は最小限なんですが、形が本当美しくて、観ていて笑みがこぼれてしまいます。
特にアーチ状の取っ手が優しい雰囲気を醸し出していて好きですね。



これは、ピエール・シャローというフランスのデザイナーの書斎机です。
こんなに美しいデザインの机で珈琲を飲みながら読書できたら、さぞかし最高の気分を味わえるでしょうね。



と言うことで、素敵な家具に囲まれて生活することを羨ましく思いつつ、楽しく観させてもらいました。
あと、ミュシャの絵も2枚だけでしたが、初めて観れて良かったです。

200円で鑑賞できるので、時間と興味がある方はどうぞ。

2009年5月23日土曜日

ぽっぽっ屋

久々にラーメン食べました。
ぽっぽっ屋の湯島店。

前に湯島を散策していたら、偶然見付けたお店です。
湯島駅北側の改札からすぐ、上野公園の南、大喜というお店の向かいです。

ぽっぽっ屋自体は、一時期馬喰町店に通っていましたので、懐かしい思いでお邪魔しました。
頂いたのは普通のラーメンに野菜、玉ねぎを多め。

元々は二郎で修行を積んだ店員さんが開いたお店というだけあって、凄いボリュームです。
ゴムのような極太面と、濃い口の醤油ダレも相変わらず。


でも、昔ほどのインパクトがなったような・・・。
脂とニンニクがあまり入っていなかったからかな。

それでも、久々のぽっぽっ屋のラーメンは美味しかったです。
個人的には、二郎よりお奨めのラーメン屋です。

2009年5月19日火曜日

Androidケータイ

昨年から言われていたことですが、ついにドコモからAndroidケータイが発表されましたね。
Androidとは、Google主導のオープンソースで開発された携帯電話向け無償OSです。

非常に楽しみにしていたのですが、個人的にHTC製というのが残念です。
折角なので、日本メーカに開発してほしかったです。

IT好きな人からの需要は確実にあるでしょうが、果たして一般顧客に対してどこまで浸透するかが楽しみです。
まぁ、僕はauから発表されるのを待つばかりですが。

2009年5月17日日曜日

美味礼賛

辻調理師専門学校の創設者でありながら、日本へ初めて本格フランス料理を広めた辻静雄の半生を描いた海老沢泰久の小説、「美味礼賛」。
僕はフランス通ともグルメ通とも程遠い存在だが、思いの外面白く読めた。

心理描写がそれほど多くないのだが、人生を食そのものに捧げた辻静雄氏の姿をただ淡々と書かれている。
そして、その辻氏の「本格的なフランス料理を広めたい」という執念のすさまじさに驚かされる。
辻氏は所謂フランス料理のパイオニアに呼ばれる存在だと思うのだが、そういった人間がならではの情熱や孤独、社会からの反発などが上手く描かれているなと思った。

我々がフランス料理を気軽に食べれるのはこの人の功績なのだと思い知らされる。
いや、高いから気軽ではないが・・・。

そして、食とは、音楽や絵画と同じく芸術なのだと実感させられる本だった。


ダンサー・イン・ザ・ダーク

アイスランドの音楽を聴くのにbjörkを外すわけにはいかない。
björkを聴いてしまったら、ダンサー・イン・ザ・ダークを観ないわけにはいかない。

だけど、何とも厳しく、苦しい映画だった。
これほどに心を掻き乱してくれた映画は初めてかもしれない。
楽しいとか、悲しいとか、感動したとかいう次元じゃない。
言葉にできない感情に襲われてしまう。只々、涙が出てしまう。

それにしても、björkの演技が天才的だった。
すごいアーティストだ・・・。

2009年5月16日土曜日

戦略「脳」を鍛える

経営の場において勝てる戦略に必要なこと、それは戦略論という「定石」と新たな戦い方を作り上げる「プラスアルファの能力」。

BCG(ボストン・コンサルティンググループ)ではこの「プラスアルファの能力」を「インサイト」と呼ぶらしい。
「戦略脳を鍛える」は「インサイト」を理解し、体験するために書かれた本。
内容は非常に分かりやすく、いたって読みやすい。

本書の内容をすごく簡単にまとめてみる。
「インサイト」の要素は「思考のスピード」と「物事を多角的に見るレンズ」。

では、「思考のスピード」を上げるには。
・戦略パターンとの結びつけを行う。
・グラフを用いた発想を行う。
・仮説と検証の繰り返す。
⇒右脳と左脳による論理とイメージのバランスをとることが大事。

「物事を多角的に見るレンズ」を用いるには。
・視野を広げる。
⇒ホワイトスペース等を活用する。
・狭く深く洞察する。
⇒ユーザーの視点、テコやツボを抑えることが大事。
・思考をジャンプさせる。
⇒逆張りを検討し、特異点に注目する。


内容は理解しやすいのだが、ただ理解しただけでは実践するのは難しい。日々訓練することが大事な気がする。
このような手法を知っているので、知らないだけでも変わってくるところはあるのかもしれないけれど。

ただ、コンサルタントやマーケティングではないので、正直今の自分の仕事にどう落とし込めばよいのかは分からない。
でも身に付けたい能力。

モダンタイムス

漫画のように薄っぺらな小説と思いきや、貢をめくる度に胸が重くなる。
情報が支配する現代社会に向けて、警鐘を鳴らした小説。
伊坂幸太郎の「モダンタイムス」。

魔王の続編である本作は現代から50年後の設定。
システムエンジニアの主人公が請け負ったサイトに、何の検索キーワードから辿り着いたかを解析するプログラムを発見してしまう。
そのキーワードとは、数年前に殺傷事件が起きた中学校の名前と、その中学とは関係性が見出せない数々の単語。
そのキーワードを打ち込んだ人間はあまりにも酷い目にあい、命を絶つ人間までが発生してしまう。
片や、キーワードの事件を機にして、のし上がったカリスマ首相も現れる。
殺傷事件の裏に潜む国家の陰謀と、それさえも作り上げてしまった社会のシステムに挑む。


今まで以上に平易な文体に、あまりに非現実的な漫画的なお話。
だけど、不穏な空気感と見事では言い切れないストーリーは、やはり魔王と似通っている。
そして、ヒシヒシと迫ってくる恐ろしさに似た危機感も。
この小説も魔王と同じく伊坂さんがどうしても伝えたかったんだろうな。


無自覚になるな。と。

この社会はとてつもなく大きなシステムで、全てを見渡している人間は誰もいない。
皆が歯車に過ぎない。たとえ、一国の首相でさえも。
それが悪いという話ではない。
ただ、歯車が噛み合った結果、何が生み出されているのかを考えなければいけない。

残念なことに、どんなにもがいても、この大きなシステムからは抜け出せない。
それが国家というものだから。
国家だけではなく、この社会も、会社もそう。
その中で、一人一人がこの社会とどう接していくかを考えなければいけない。
あまりに途方もない話ではあるけれども、順応するのか、逃げ出すのか、あるいは戦うのかを。
だけど、ここで忘れてはいけないことがある。

もっと小さな目的のために人は生きている。
それは、個人の小さな幸せ。


何か伊坂さんの気持ちを汲み取ろうと思って書いたのですが、陳腐な表現になってしまった。
ごめんなさい、伊坂さん。

この小説、素敵だなと思った言葉がたくさんあった。
その中で、個人的に何かよいなと思った台詞。
「人間は情報ではできていないのよ。血とか筋肉とか骨じゃない?」

2009年5月11日月曜日

Yesterday Was Dramatic

至高のエレクトロニカ。
アイスランド出身のバンドMúm。

電子音なのにも暖かく、懐かしい。
例えるならブリキのロボットのように。
実際には親しみがないんだけど、何故か懐かしく、暖かな気分へと誘ってくれる。
そして、どこか愛らしい。

Múmの奏でる音はそんなブリキとどこか似通っている気がする。



「I am 9 Today」という曲。
この音は、僕を安らかな気分にしてくれる。

2009年5月10日日曜日

水元公園ラン

共に皇居ランを行う同志が見つからなかったので、出掛けるのが億劫になってしまい水元公園を走ってきました。

水元公園はとても広々していて素敵な公園。
水辺や緑が多いので走っていてとても気持ちいいです。

あまりいい写真ではないですけど。



猫も沢山います。



ということで、本日は久々に長距離を走りました。
走行時間は1時間45分。
距離はきっと17キロぐらいかな。

LSDのつもりなので、気持ちよくゆっくりと。
それでも最後は足を踏み出すことでさえ、苦しかったです・・・。

暖かくなってきたので、気持ちよく走れる程度に頑張ります。

2009年5月9日土曜日

善き人のためのソナタ

あぁ、いい映画だったな。善き人のためのソナタ。

舞台は国民への監視を徹底的に行っていた東ドイツ。
国家保安省の局員ヴィースラーが反体制の疑いがある芸術家の私生活を監視する。
しかし、ヴィースラーは芸術家達の世界に触れていくことで、彼等に共感を覚え始めてしまう。

特に面白い話ではないけど、人の心を刻み込みながらも淡々と展開されていく物語。
丁寧に作られた映画だなと思わされる。
特に人の弱さや孤独、逆に強さや正義、その描かれ方がとても上手い。

観終わった後に残るのは、静かで心地のよい感動。そして、確かな余韻。
色々なことを考えさせられる。

国家の意義。
その中での自分自身の意義と正義感。

考えても埒が明かない。まぁ、いいか。
多くの人にお勧めしたいと思った。



ゴールデンウィークは久々にたくさんの映画を観た。
・独裁者
・ヒトラーの偽札
・カーポティ
・善き人のためのソナタ

静かな映画がいいなと思って借りたら、何故か社会派ばかり。
基本的にどれも良い作品だった。

2009年5月5日火曜日

谷根千散策

最近ちょっとした人気スポットの谷根千(谷中、根津、千駄木)を散策してみました。僕の場合は、湯島、根津、千駄木だから湯根千かな。

まずは、千駄木駅の近くの須藤公園。
この公園は大して広くはないのですが、公園内に小さな滝があるのです。
何も知らずに入ったので驚きました。都心にいながら自然の音が聞けるのは嬉しい。


次に千駄木から不忍通りを南に下り、根津神社のつつじ祭り。
残念ながらつつじは既に終わりかけていたので、人の多さのわりにはイマイチでした。


根津神社を出た後は、フラフラとしながら根津駅方面へ。
このあたりは美味しそうな飲食店や趣のある建物がたくさんあり、楽しかったです。
まぁ、1人でお洒落なお店に入るのは恥ずかしかったので、お昼は豚カツにしておきました。
根津駅近くの信濃屋。1000円のわりに、美味しいロースカツを頂けました。



根津からは不忍池の裏側を通り、湯島へ。
その途中に横山大観記念館がありました。
残念ながら休館日だったので、今度時間を見つけて行ってみようかなと思います。



そして、最後は湯島天神。正直、期待外れでした。
梅園があったので、来年の梅の季節に行ってみたいですね。


何かあまり面白くなさそうな日記になってしまいましたが、なかなか楽しい散策でした。

独裁者

これこそが映画なんだ。素晴らしい。

映画を観てよかったなと思えた作品となかなか出会えず、あまり映画を観なくなってきたけど、チャップリンの「独裁者」は僕に映画の素晴らしさを再認識させてくれた。
見終わった後は一人で拍手喝采。これ以上にない満足感。

何がそんなによかったのかというと、まず第一に観ていて本当に楽しい。
コミカルで滑稽な演技に思わず笑ってしまい、軽快でユーモラスな展開が非常に面白い。

そして、人の心を突き刺さすメッセージ力。
これほどにもダイレクトに思いを伝えられる映画は、果たしてどのぐらいあるんだろう。
同時代を生きていた人に伝えたかったメッセージなんだろうけど、70年経った今でも全く色褪せない普遍性がある。
感動したと言えば安っぽく聞こえそうだけど、そうなのだからしょうがない。感動した。

この映画は1940年の作品。
その時代にこれだけの映画を作り上げたチャールズ・チャップリンに畏敬の念を抱かずにはいられない。


今回はレンタルでDVDで観たので、給付金が入ったらDVDを買おうかな。

ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎さんの作品を読んでいつも上手いなと思わされるのが、現実的にはちょっとあり得ない設定の世界に、現代社会の問題を投影させること。
そのせいか荒唐無稽な粗筋でも、とても面白く読ませながらも、社会を変えたいなと読者に思わせてくれる。その力が凄いなと思う。
彼の自分の作品の中で「小説は身体に染みこむんだ」とは言っていたけど、やはりパンクロックに近い作品が多いなと感じる。
そんなこんなで伊坂作品が大好きなんです。

前置きが長くなったが、「ゴールデンスランバー」を読んだ。
「3回読んでほしい」というインタビュー記事を読んだので、1年越しに3回読んだ。
昨年の直木賞へのノミネートは辞退はしたが、たくさんの文学賞を受賞しただけあって、面白い作品。

物語は、仙台で首相暗殺事件が起こり、国家のような大きな仕組みによって犯人役に仕立てられた青柳雅春が頑張って逃げるというお話。
ハリウッド映画よくありそうな内容。それでも、ハリウッド映画では味わえない小説の上手さを感じる。

逃げるという粗筋の中に、学生時代の閑話を挟むことで、各キャラクターを際立たせるとともに、1つの大きなうねりに集約させる構成はさすが。
思わず涙しそうになる優しさが感じさせる甲乙つけがたい結末も好きだな。

小説って文学でもあるし、文化でもあるし、娯楽でもあって、色々な要素があると思うけど、この作品は1つの小説の型としての完成形なのかなと思う。