2008年7月22日火曜日

決壊.2

少し前の話になるのですが、平野啓一郎著の『決壊』を読み終えました。

この本は、今の時代の危うさをどこまでも残酷に書かれています。
小説の話自体というより、この話を生まれてしまった今の時代に対し少し哀しくなりました。

特別に面白いという感覚は味わえなかったのですが、この小説から受けた余韻は重く、暫くは拭えそうにありません。

2008年7月19日土曜日

資格試験

決めました。

今年中に『ソフトウェア開発技術者』と『LPIC Level1』とります。
自分への戒めとして、このブログに宣言しておきます。

現状にダラダラと文句垂れていてもしょうがないので、やるべきことをやる。
それだけです。

それでは、結果をお楽しみに。

2008年7月7日月曜日

アヒルと鴨のコインロッカー[映画]

「小説にしかできないことを書きたい。小説の可能性を広げたい。」
というようなことを伊坂幸太郎さんが何かの雑誌で話していたことを昔読んだ気がします。

確かに伊坂さんの作品は、最近は傾向が変わってきましたけど、初期の作品は映像化が難しいだろうなというものばかりです。
だから、伊坂作品が好きな僕は、映像化の話を聞くとちょっと冷ややかな目線になってしまうのですが、『アヒルと鴨のコインロッカー』には裏切られました。

これは面白かった。
決して原作をそのまま映像にしたわけではないのですけど、無駄のない絶妙な構成に、小説さながら軽快のテンポとちょっとだけ洒落た映像が心地よい。

そして、キャストがこれ以上ないと思えるぐらい嵌っています。

原作読んでない方は、もしかしたらちょっと分かりづらいかもしれませんけど、大袈裟ではないささやかな感動をもたらしてくれる作品です。


2008年7月5日土曜日

決壊.1

また平野啓一郎さんのエントリーになってしまうのですが、先日『決壊』の刊行記念のトークイベントを丸善本店へ聞きに行きました。
色々なお話を聞くことができ、大変有意義な時間を過ごさせていただいたので、何点か印象的だったことを書かせてもらいます。

この小説のテーマは、信仰のないこの時代に、決して赦しえない犯罪に直面した際に、人間は何をもって『赦し』とするのかということです。

今のあらゆる問題が複雑に絡み合った時代に、世間で所謂「勝ち組」と言われている人間たちにも、自分自身の成果を正当に評価してくれる受け皿が社会にはなく、『心の闇』と言われているものを抱え込んでしまう。
そして、その不安定の均衡を保ちながら誰もが生きていて、それが『決壊』する時に決して赦しえない犯罪が起きる。
それは加害者側も、被害者側の人生をも滅茶苦茶にすることになる。
そのギリギリの状態で人間は何を『赦し』とするのか。
物語特有の収まりのいい結末したくなくて、小説の結末を用意せず連載に取り組み、著者も物語と併走しながら書いたと話されていて驚きました。

このテーマは以前から考えていたようようですが、今回小説を執筆するにあたって信仰がない時代の犯罪を描いたドストエフスキーを読み返したことに影響されたということです。

また、今回のトークイベントでドストエフスキーの面白さについても話されていました。
人間の心理って「文法」に規程されていて、例えば「今晩の夕飯は・・・・」と言うと、格助詞の後のなにがくるか期待してしまうということを話されていて。
その動詞の種類には「・・・をした」という次の場面を移り変わる動詞と、「・・・と考えた」という自分自身に返ってくる動詞があるというのです。
前者をよく用いているのが所謂テンポがよい面白い小説とされています。
しかし、ドストエフスキーは後者にも関わらず面白い。
それは何故か。
それは主人公の複雑な人間性に対する理解が徐々に深まり、主人公と自分自身が併走しているかのように感じられるからだということを話されていました。
やっぱり、小説家の目線って面白いですね。
今度、「罪と罰」を読み返してみます。

まだまだ色々なお話があったのですが、このあたりで切り上げておきます。
最初この小説の粗筋を知ったときに、平野啓一郎さんがミステリーを書くということに違和感を感じたのですが、今回のお話を聞いて納得しました。
決壊、楽しみです。

※サインしてもらいました。

2008年7月3日木曜日

葬送.2

先日、平野啓一郎著の『葬送』をやっと読み終えました。

単行本で第一部、第二部あわせ1200ページ越え、文庫にすると全4冊の超大作です。
粗筋については前回のエントリーで軽く触れましたので、割愛させてもらいます。

この小説は、芸術家たちの「作品を生み出す苦悩」や「大革命時代をどのように生きるかという人生論」が物語の随所に描かれており、現代小説にはなかなか類がない、意欲的に古典的な文学に挑戦したように感じられました。
その代わり、小説の軸が分かりづらく読みにくいのも確かですが。

西洋史と美術史の知識がない僕には第二部を読むのには難儀しましたが、代わりに自分の興味の大いに広げてくれる一冊となりました。

しかし、これほど完成された筆致で、実際にフランスで生活し徹底的に調べ上げた知識をもって、これほどの小説を書いた著者には畏敬の念を抱かずにはいられません。
しかも、20代で書き上げたというのだから・・・、生半可の意志じゃ絶対に成し遂げられないでしょうね。


※装丁がとても綺麗です。


・葬送.1
 →http://yohheii.blogspot.com/2008/06/1.html