2007年6月9日土曜日

殺人の門

久々に読んだ東野圭吾氏の作品。
あまり人気はないらしいが、僕は好きだ。

物語は全体を通し、温度の低い語り口調。

主人公は死というものに纏われながら不穏な幼少期を過ごす。
その背景に存在する歪んだ彼との友情。
その黒い絆は決して年を老いても切れることはない。
主人公が安住の地を得たと思えば、彼にって再び奈落の底に突き落とされる。
彼に対して抱く疑念や憎悪が殺人という衝動的な行為まで昇華し切れずに葛藤する主人公。

そんな小説だ。
ミステリーとしたら、決してテンポがよいわけでもなければ、劇的なラストがあるわけでもない。

しかし、面白かった。
主人公の半生記に及ぶスケール感。
そして、絶妙な距離感の人間関係の中で生じる矛盾と葛藤が描かれている。


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